池松潤です。アテンションエコノミーと呼ばれる「関心・注目の獲得」が経済的価値を持つようになり貨幣がごとく交換材として機能するという状況になっています。今日はその対極にあるインビジブル・エコノミーについてお話したいと思います。
昨年よりSNSコーチングをはじめましたが、実践スキルにはSNSの使われ方を社会構造やリテラシーから読み解くことが大事だと感じています。SNSをビジネスに活かしたい方へ少しでもお役に立てたら嬉しいです。情報発信学・ニュースレターは、ほぼ毎週月曜日発行を予定してます。
池松潤(いけまつ じゅん)
恋愛小説家/ サイボウズ式第2編集部 / 情報発信学 SNSコーチング ※最新情報・メディア・イベントなど詳しくは ⇒ コチラ
1:そもそも「アテンション・エコノミー」とは何か?
ネットの普及発達とともに情報過多社会が進み情報の流通量は爆発的に増加しました。探したい情報はググれば無料で得られるようになり容易にコピぺできます。情報そのものの価値は低下した一方で、有限なものは時間であり「可処分時間」の争奪戦が起こっています。以前は視聴率が人気のバロメーターでしたが、現在ではフォロワー数やyoutube視聴回数視聴回数が人気の目安になっています。つまりネットにおける人々の関心や注目を獲得する事が希少で価値を持つようになったという考え方です。
1971年に経済学者ハーバート・サイモン(Herbert A. Simon)が情報過多社会におけるアテンション獲得の重要性を提唱し、その後1997年に社会学者マイケル・ゴールドハーバー(Michael H. Goldhaber)が情報爆発社会において仕事だけでなく趣味やプライベートの情報もすべて混在しアテンション獲得がビジネスになり物質的な経済からアテンションに基づく経済へ移行する状況を「アテンションエコノミー」と名付けました。後に2001年にトーマス・ダベンポート(Thomas H. Davenport)とジョン・ベック(John C. Beck)によって書籍『アテンション!(Attention Economy)』2005年に出版されたことで普及しました。
2:「クリエイター・エコノミー」の台頭
誰でも情報発信できて、自らのブランドを販売できるようになったことでクリエイターと呼ばれる人の数は爆発的に増えました。注目(アテンション)を集めることで稼げるようになったからです。これはYouTuberだけでなくフリーランサー、アスリート、パラレルワーカーなどあらゆる職種のひとがクリエイター化するようになりました。しかし以前はプラットフォームのチカラが強くて「プラットフォーム・イズ・キング」「コンテンツ・イズ・クイーン」と呼ばれていてやはり主役はプラットフォームでありコンテンツや商品をクリエイトする側は従属的だったのですが、クラブハウスの課金化が噂されるなどプラットフォームの課金モデルが増加傾向になることで風向きが変わってきました。
クリエイターが「独創性」を発揮することやSNSを使って「コアなファンを構築する」ことで想像以上に稼げるようになってきたからです。このような状況をクリエイター・エコノミーと呼ぶようになり記事・特集が組まれるようになりました。これはD2Cブランド(ダイレクト・トゥー・コンシューマー)と呼ばれる個人で企画・製造した商品を直接販売するネットビジネスに限りません。インフルエンサーと呼ばれるネット界隈での著名人にも限りません。商材も産直農作物からアパレルなど衣食住に関わる様々なものが売られています。そして大規模から小規模に至るまで様々なクリエイターエコノミー(創作・経済圏)が生まれているのです。以前だと怪しい情報商材などに限られていたのですがネットで可視化できるようになった事で変化が起きています。「ネットは信頼できない」と言われる状況からは違った世界へ突入したと言えるでしょう。この様相を自分には関係ない別世界の出来事だと感じている人もまだまだ多いのは知っていますが恐らく3~5年くらいで日本でも一般的な状況になると予想しています。ニュース番組で普通の出来事となるにはある程度の時間がかかりますが、1993年頃にインターネット接続が個人でも可能になり、2000年代初頭にECが一般的になり、近年ではSaasビジネス(あなたもサイボウズくらいはご存じでしょう)が一般的になった流れを考えると不思議ではありません。
2:インビジブル・エコノミーとは何か?
「アテンション・エコノミー」という状況が「クリエイター・エコノミー」を生み出していますが、動きが派手で象徴的な事は記事にしやすいもの。しかし皆さんにとってはインフルエンサーもインフルエンサー・ビジネスとも思えるクリエイター・エコノミーも関係ない出来事だと思っていませんか?私も当初は自分事化できなくて興味がもてませんでした。しかしコロナ禍によって考え方が変わったのです。
私の知人は主婦&カメラマンで「ニューボーン・フォト」とか「ベイビーボーン・フォト」とよばれる出産児の写真から、七五三や結婚式の写真を撮っています。コロナ禍で撮影ができなくなったのですが「ベイビーボーン・フォト」に使用するタオルケットや小物を1週間8千円くらいで貸し出すことにしました。なんせ10数セットあったので寝かして置くにはもったいないのでネットで貸し出すことにしたのです。そうすると月・30万円ほどの売り上げになりました。コストは洗濯代程度ですからほぼ利益と言えます。地方在住で月収30万円のインパクトがどれほどかというと東京在住の40万円~50万円の副収入に値すると言っても過言ではないでしょう。このレンタルの顧客は彼女に「ベイビーボーン・フォト」を撮ってもらった人たちでした。自分で撮ろうとしたのでしょう。しかしプロのようには撮れません。コロナ禍がひと段落するとまた撮影を依頼するようになったそうです。ちなみに彼女はインフルエンサーと言うほどではありませんがTwitterで7,000フォロワーほどInstagramで2万フォロワーほどのファンがいます。フォトミートアップ・イベント主催などもしています。ですので情報アウトプットを重ねていて準備が整っていたと言えます。個人のDX化が完了していたと言えるのかもしれません。
このように日経新聞や専門メディアが取り上げない「小さな目に見えない経済圏」が多数生まれています。乱暴に言い例えてみると大型コンピューター全盛からクライアント・サーバーへダウンサイズしたコンピューターの歴史となぞらえることができます。大量生産・大量消費経済から個別消費・経済社会への移行が加速しているのだと思います。これは目に見えない「産業・経済圏の小型化」といえる経済の多様化が起きているのではないでしょうか。インビジブル(目に見えない)経済圏についてニュース記事になるのは難しいかもしれません。なぜならばメディアにとってこの様相を特集にするには地味すぎて注目を集めることができないからです。メディアもまたアテンション・エコノミーに影響を受けているからです。
3:「インビジブル・エコノミー」は「お互いさま・エコノミー」を生み出している。
「お互いさま・エコノミー」とは、無形資産やスキルの物々交換のこと。例えばテレビ時代の思考様式ではバナー制作を誰かに頼む場合はお金を払ってお願いしていました。これはお金を媒介して価値の交換をしていたと説明できます。しかしSNS時代にはフォロワーに呼び掛けて集客する無形価値を提供する代わりにバナー制作というスキルを物々交換するようになりました。つまりお金を媒介しなくても価値の交換をすることができるようになったのです。これをテレビ時代の思考様式で眺めてしまうと「なんだアマチュアのレベルの話でビジネスには役に立たないじゃないか」と昭和のオジサンは言うのですが、それはアタマが固いと言わざるを得ない状況になっていると感じています。
わたしは金曜トワイライト文学賞の総合大賞として授賞作品の60秒・アニメ動画をを作成しました。アニメ作画は岡山在住、動画編集は札幌在住のnoteクリエイターですが本業ではないもののプロ級の作品をアウトプットしていました。3人で絵コンテ作成から作品完成まで約1か月でしたが高品質な作品が短期間で仕上がりました。これは金銭の授受が発生しないプロジェクトでしたが、そこら辺の制作プロダクションが作成する映像よりもはるかに細部にスキルが行き届いた上質な作品になったのです。これは「お遊び」と言える範囲を超えていて制作プロセスもnoteに開示されるという行き届いたプロジェクトでした。この従来の経済活動・概念では説明できない様相を何と呼べばいいのか難しいのですが「お互いさま・エコノミー」と呼ぶと腑に落ちるなと思うようになりました。

振り返ってみるとテレビ時代には「仕事のクオリティ保証」をお金を媒介することで担保していたのですが、果たしてそれが完全に機能していたかと言うとそんな事も無いわけで、信頼できる人(実績で証明されている人)にお仕事を頼んでいたわけです。ビジネスとは単に納品すればいいワケでもなく仕事の細かいすり合わせができないと問題が起こるからです。シゴトの品質を見える化できなかったのでお金を媒介することで取引を明確化させていたと言い例えることもできるでしょう。
しかしnoteで文章力やアウトプット力を予め把握できるとチームを組むことは想像以上に容易なのです。文章を書ける人は知的創造力が高いというのもありますが文章力には思考や人柄がにじみ出るからです。ネット検索をして商談相手の好みを事前に学習しておこうとする事さえもしていない人にとっては「え?何のこと?」状態だと思いますが。。ビジネスとしてインビジブル(目に見えない)経済圏はすでに多数発生しているのです。「アテンション・エコノミー」が「クリエイター・エコノミー」を生み出しているように「インビジブル・エコノミー」は無形資産・スキルの物々交換と言える「お互いさま・エコノミー」を生み出していると言えるでしょう。
※SNS経済圏・相関図
4:あなたの知らない「目に見えない世界」は確実に広がっている
日本人の得意とする「ものづくり」は目に見える世界です。ネットの中に存在する経済活動はすぐ数字に表れますが、取引形態まで視覚化されるには時間がかかります。例えば「給与支払い」は銀行口座に振り込まれるのが一般的ですが、キャッシュレス化が進むとアマゾン口座や、PayPay口座に給与が直接振り込まれるのも想像の世界ではなくなりつつあります。給与の半分は銀行口座へ、半分はキャッシュレス口座振り込みになってもおかしくはありません。取引形態が見える化するまでには時間がかかるのです。
経済は「信用」(Credit)と「信頼」(Trust)で回っていますが、お金やシゴトの在り方の再定義がさらに進み、新しい世界が広がっているのは間違いありません。ダーウィンの進化論の通り、強いものが生き残るのではなく変化に適応したものが生き残ります。これからも本質を捉えて情報発信学もアップデートしていきたいと思います。
情報発信学・ニュースレターは、ほぼ毎週月曜日発行を予定してます。ではまた来週お会いしましょう。
SNSコーチング・未来を変えるための情報発信・7つのスキル
youtube動画の解説版をアップしています。
ご興味のあるかたはコチラへどうぞ
https://note.com/sns_coaching/m/me5f35acd9f82
おはようございます!
自分にとって価値がある物に投資する、し合う。たとえ、それが社会的には何の影響力がなくとも。
これ、全く無駄にはならないんですよね。むしろ、大きな組織や誰もが知る成功例では味わえない"共に挫折しながらも成長していく、作り上げて行く過程こそが宝"と言うか。
いきなり大きくならなくとも、実体験を通して刻まれた記憶や知識は強いです。
と言うわけで、今日もガンガン体当たりからの大失態をやらかしてきます!(※ドMでは無いです。念のため 笑