事業グロースのためのコミュニケーションデザイン
池松です。みなさん桜見🌸はいかがでしたでしょうか。再開した前回は暑くるしく語ってしまいましたが、今回もさらに分解して暑苦しくお届けします。すいません。不定期ですがよろしくおねがいします。
池松潤(いけまつ じゅん)
コミュニケーションデザイン・情報発信学
東京都出身。慶応義塾大学卒業後、大手広告会社員時代に雑誌コラム連載・ビジネス書を執筆、国内5万部・海外版等。登壇・イベント・最新情報などは ⇒ コチラ
①:SaaSのコミュニケーションデザインには新しい人材が求められている
コミュニケーションデザインの役割はざっくり以下の2つに分類できますが、なんのためのコミュニケーションデザインなのか?事業がフォワード(促進)するためには単にデザイナー視点のコミュニケーションデザインだけに留まらないこと。その上位概念・視座のヒトがいないと事業促進へパワーが伝わりきりません。
そこで、前回「コミュニケーション・デザインを解剖する -BtoB SaaS篇」で述べたように①コミュニケーションセンス+②デザインセンス(絵心にちかい)+③社会心理へのセンスの3つセンスを持ち、なおかつSaaSビジネスへの造詣やデータアナリシスの能力を備えた新しいタイプのCD(クリエイティブ・ディレクター)が必要だと思うのですが、どんな能力なのかシェアしたいと思います。
A側:プロダクトデザイン(UXデザインとUIデザイン)
プロダクトのUXは、職域を超えプロダクトに携わるすべてのメンバーがそれぞれの立場で考え議論されデザインされる。ミーティングで発せられる言葉や頭の中にあるイメージを図解やプロトタイプにして事業をフォワードさせること。議論されたUXを実現するためにUIデザインをすること。高速にフィードバック・カイゼンを繰り返すチームづくりが何よりも大事だと感じる。
B側:ビジネスコミュニケーションデザイン(事業を促進させるコミュニケーション)
「ありそうでまだ見たことがないあるべき未来」が目に浮かぶようにコミュニケーションをデザインすること。企業ブランディング(行動)、PR、マーケティング、営業、CS、FSのすべての行動を、ファクトからビジュアルに落とし込んで、事業が前進するコミュニケーションを繰り返し行う。
このA側・B側の両視点を持っているヒトって少ないけど、そもそもデジタル・ネイティブ観というかソーシャル・ネイティブ観からズレてる場合が多い。なぜならそれがコミュニケーションの骨格を支えるものであり、コミュニケーションは「見えないもの」から「見えるもの」へ変わったことが言語化できるかだと思う。
そもそもこのシゴトは何が変わったのか?まず本質を把握することが大事で、そこが抜け落ちてると悲惨なビジネス風景になる。
②:コミュニケーションは「見えないもの」から「見えるものになった」
そもそも「モノづくり」しか無かった時代のコミュニケーションとは、より消費者に近づくことであり、イチイチ調査しないと分からなかった。実際には調査した頃には事態は変わっていることも多かったし、コンビニのPOSデータに振り回されてしまって、ユーザーとのコミュニケーションは経験や勘に頼りがちでした。
SaaSビジネスになって、やっとコミュニケーションが目に見えるようになったのです。顧客がいつ検討し始めたのか?とか、契約して1か月目でどうなったか、何ヶ月目で黒字化したか?が目に見えるようになった。何月のキャンペーンでは継続が長かったなとか、解約が多かったとか。しかし気をつけたいのは、SalesforceやHubspotのよくあるフォーマットでしか考えられない愚か者も多い。コトの本質は、
何がダメで何がうまくいっているのか?解るようになった。
ってこと。つまりSaaSに重要なMRR(月次定期収益)やARR(年間定期収益)にも質があるわけで、そこに関して論ずららることは少ない。
この辺はSaaS未経験者の方にとっては何のこと?状態だと思われるので補足しておくと、下記のように達成率を示すスピードメーターばかり見ている輩が多い。つまりMAツールの奴隷になっている。ひどい場合はMAツール奴隷に振り回されている二重災害奴隷がいる。どの奴隷も自分が奴隷化してる事に気がつかない。いや自分のアタマで考えられない。(だから奴隷なのだけど)
上記のようなツールのメーターだけでは、何がダメで何がうまくいっているのか?解らない。そこでコホート分類をしたヒートマップ図が必要になる。
※例・縦軸「顧客の初回取引開始月」・横軸「何ヶ月目か」で作成の場合(イメージしやすいためのサンプルです)
コホートとは、同じ時期に近しい経験をしている人々の分類(グループ)を指す言葉なんだけど、「コホート分析」は、もともと心理学や社会学で世代や社会的な経験によって被験者を分類して、行動や意識にどのような変化が表れるのかを調べる分析手法のこと。
ネットでの「コホート分析」とは「ユーザー属性」や「キャンペーンごと」のコホートに分類してユーザー動向を知るための一般的な分析方法です。これをヒートマップにして一目でわかるようになった。POS全盛時代から考えるとコレがわかるって凄いことだと思う。
では月ごとの変化で解説しますのでしばしお付き合いください。
■6ヶ月目
▲ここまでは、大きな傾向はなく、すべて3ヶ月が損益のボトムで、4ヶ月目から少しずつ回復。しかしすべての期間でまだ赤字が続いています。
■11カ月目
▲やったね!点線で囲んだところを拡大してほしい。やっと黒字化してきた。7ヶ月目で黒字になったってこと。ここで注目すべきは、それ以前の顧客がすでに最大11ヶ月目を迎えているにも関わらずまだ赤字だということ。つまり傾向に変化が現れている。このようにカイゼンした経過が色で見えるようになった。点線以降に獲得したユーザーが何ヶ月目で黒字化するのか考えるのが本来のCS(カスタマーサクセス)の仕事だけど、そのためにコミュニケーションをより良くどうデザインするか?の情報があるか・無いかでは雲泥の違いだ。ココでピンとこない鈍感なヒトは何か重要な知能が欠けているのでこの先は読まなくていいと思う。
■16カ月目
▲やっと改善が功を奏して4ヶ月目で黒字化できるようになりました。7ヶ月目には過去最大になっているのがわかる。こうやって改善にどんな効果があったかわかるようになった。つまり1個づつカイゼン項目を行えば、その効果が目に見えるようになったってこと。事前に逆算して考えておけばどうすればいいかわかるようになったのです。
■27ヶ月目
▲点線の時期から黒字化が少しずつ遅くなっていることがわかる。もし作戦変更が無いのであれば、なんらかの環境変化が原因だと推測できる。競合が出現したのかもしれないし、もしくはユーザーが飽きているのかもしれない。コミュニケーション・デザインに終わりはないのは、コミュニケーショの果てしなき知能化だからだと思う。
コミュニケーションの何がダメで何がうまくいっているのか?逆算化する。
そもそもなんだけど、SalesforceやHubspotなどツールに組み込む「逆算能力」が求められている。だけどこれが陣頭指揮できるヒトは意外と少ない気がする。
コミュニケーションデザインは数字とどう向き合うか自分で想像すること。この辺を把握しているかで成果が変わる。もしあなたがツールの奴隷になってるなら自分の知性を考えたほうがいい。
コミュニケーションデザインに大切なのは、ケーススタディを「っぽい」感じにハックするのではなくて、自分たちに何が必要かゼロから自分のアタマで考えることだと思う。だってデザインなんだから。
③:コミュニケーションツールの進化を眺める
ネットでの革新の本質は①人知より優れたデータドリブンが可能になった。②凡人にもデザイン表現の可能性を高めた。の2点だと思う。前述で①データドリブンを書いたので、②の「表現力」について書き残したいと思います。
Adobeイベントで話題になったMake It Popってご存知でしょうか?画像からコンテンツをAdobe Senseiが理解して加工する画像・動画技術なんですけど、僕がコトバで解説するより、まずは下記のtweet動画を見てほしい。
この動画を見るとわかると思うんだけど、
adobe sennseiの未来は「デザイナーのノーコード化」
と言い例えることができると思う。
Adobe Senseiとは、2016年い発表された人工知能(AI)とマシンラーニング(機械学習)を駆使して、「隠れたビジネスチャンスの発見」や「単調で時間のかかる作業の高速化」を支援して、一人一人に適切な顧客体験を提供する仕組み。
あれから6年。現在のAdobe Senseiが可能にしている進化はまだまだコミュニケーションの一部ですが、AIを使って段違いのコミュニケーションへの生産性を高めようとしている。
現在はデザイナーの生産性向上へスピードアップしているだけに見えるけど、数年先に訪れるのは「誰でもデザイナーになれる」時代が待っているということですAdobe Senseiはクリエイティブな判断は自分自身で行い、面倒な作業はマシンに任せる時代がやってくるということなのです。ボクはMacが版下作業を駆逐して写植屋が潰れて行くのを見た世代だけど(比喩が古い)あなたのデザインスキルは陳腐化してシゴトが変わっていく(配置転換される)ってことだと思う。
★時間があるヒトはこっちも見てください(字幕あります)
Project MakeItPop
Adobe MAX Sneaks 2021
こちらは、Adobe MAXを詳細に解説した素晴らしいやつ。
興味のあるなしに関わらず非デザイン領域のヒトほど読んだほうがいい。
https://ics.media/entry/211029/
これらをジックリ読むとわかるのは、コミュニケーションデザインを支えるツールは劇的に進化しているってこと。イマと同じ考えでシゴトしてるとあっという間に陳腐化して役に立たなくなるってことです。
④:コミュニケーションデザインには行動変容してもらう能力と知性が必要
前回も語ったのですが、コミュニケーション・デザインはロゴや平面ビジュアルなどデザイナー視点から語れることが多い気がする。それはSaaSに必須のUI/UXデザイン関連から派生しているためだけど、がしかし「まず知ってもらいたい」とか「事業がスケールしてほしい」「事業をもっとフォワードしてほしい」というCEOの視点が大事。でもこの辺のハナシをしてる記事もSNSも見たコトがない。ググっても出てこない。
コミュニケーションデザインには「ターゲットに行動変容してもらう能力」と「知性」が備わっている必要がある。
行動変容してもらうチカラとは、「なるほど〜」とか「さすが!」って感じてもらって行動が変わること。そして「気になるなぁ」とか「なんかイイね」とか損得勘定を超えた感情を引き起こす能力のここと。
これを考えるチカラは、お金をビジネスで沢山つかって遊んだ経験が必要になるんだけど、このあたりが一朝一夕に人材が育たないのが根深い問題だと思う。だから新しい時代のコミュニケーションデザイナーの土壌を豊かにするコトから始まるんだと思う。例えば、もっとSaaS界隈のコミュニケーションデザイン「賞」があってもいいと思う。
⑥:コミュニケーションデザインは結局ヒトなんだけどイマ何処にカネをかけるか判断できない問題
国内のSaaS界隈へ目を凝らしていると、コミュニケーションデザイン領域でもSmartHRが一枚も2枚も上手なのは否めません。だから自社がその真似っ子だけで良いのかと問いたい。
そもそもコミュニケーションとは、言語や文章のアウトプットから始まると思うけど、よく目をこらして眺めてみると20代でも心理的安全性からかFacebookしか使えないヒトもいるし、noteとTwitterや、Youtubeとnoteなど複数プラットフォームを組み合わせて使いこなせているヒトは希少だと思う。
このあたりから始まる「コミュニケーションデザインに対して本質を見極めるセンス」が経営者に無いと難しいってのはわかるんだけど
どのタイミングで何処にカネをかけると事業が伸びるのか方程式が存在しない。
ってことが問題になっていると思う。この辺はVC(ベンチャーキャピタル)のヒトにも聞きたいんだけど、コミュニケーションって数値にすると貧素になるわ、事業グロースに役立つにはザックリしてるわで、SaaSの事業グロースにどう使うか経営者が言語化できてない場合が多い。だからタクシーCMとかお決まりのツールを使うことになるんだろうけど、自社の将来を考えるならもっと独創的でなければ意味がないと思う。
⑦:コミュニケーションデザインはPMFと両輪の輪
PMF(プロダクトマーケットフィット)とは「サービスや商品が顧客の課題を解決できる適切な市場で受け入れられている状態」だけど(やってみれば解るけど)そんな簡単じゃない。しかしそのためのコミュニケーションデザインでもあるわけで、鶏と卵みたいになってるけど「コミュニケーションデザインの本質を見極めるセンス」が経営者に求められている。
SaaSビジネスとは「お客さまの成功が自分たちの成功である」という「一緒に伸びて喜びを分かち合えるところ」が魅力。その魅力が希望をもたらすのであれば、この辺をDATAロジカルに語ってくれるVC(ベンチャーキャピタル)のヒトがいてくれたらボク如きが語るのも不要だと思うんですよ。
しかしコレだけMAツールが発達したんだけど、やはりヒトもカネも必要。ではどうするか?そんな簡単なハナシじゃないのは解ってるけど、ボクなんかより優秀なヒトとその辺りを語ってみたいと思います。
今回も長く暑苦しくなりましたすいません。ココまで読んで頂いた奇特なあなたに感謝です。次回では「空気を読む国に必要なこと」とか「本質はそのまま伝えてもダメ」とか「エンタメ化する動画とは」など書ければいいなと思います。ではまたサブスタックでお会いしましょう。
池松潤(いけまつ じゅん)コミュニケーションデザイン・情報発信学東京都出身。慶応義塾大学卒業後、大手広告会社員時代に雑誌コラム連載・ビジネス書を執筆、国内5万部・海外版等。登壇・イベント・最新情報などは ⇒ コチラヴァイブスのあうヒトがスキです(文章かけるヒト)