世間には「〇ヶ月でフォロワー数を〇〇万人に増やしました」というセミナーはあっても「自分の仕事や興味関心のためにSNSをどう使うか」を教えてくれる所はありません。ライターのためのライティング教室はあっても、SNSああここかここかいったを自分の仕事のためにどう使うか、ゴール戦略からどうつかえばいいかを教えてくれる所はなかなか見当たりません。
というわけでSNSコーチングをはじめましたが、実践スキルにはSNSの使われ方を社会構造やリテラシーから読み解くことも大事だと感じています。SNSをビジネスに活かしたい方へ少しでもお役に立てたら嬉しいです。情報発信学・ニュースレターは、ほぼ毎週月曜日発行を予定してます。
池松潤(いけまつ じゅん)
恋愛小説家/ サイボウズ式第2編集部 / 情報発信学 SNSコーチング ※最新情報・メディア・イベントなど詳しくは ⇒ コチラ
第5回:情報弱者から保有時間貧者へ ―新しい格差へのシフト―
情弱(じょうじゃく)つまり情報弱者とは各種の情報に疎くて上手に立ち回れない人を揶揄して言いますが、ネット通信サービスを都市部と同水準で受けられない地域・集団を指して呼ぶ場合もあります。それはネット等の情報通信技術を利用できる人と利用できない人との間にもたらされる格差のことです。
この辺の状況を20年前は「デジタル・デバイド」と呼んでいました。1996年にテネシー州ノックスビルの演説で当時のアメリカ合衆国・副大統領のアル・ゴアが発言したことが由来ですが、ゴアが提唱した「情報スーパー・ハイウエイ構想」が背景にあったことを付け加えねばなりません。アメリカ全土の隅々まで整備することでインターネットの世界を広げるってハナシなんですけど、格差はこの頃から始まっていたと言えるかもしれません。
「デジタル・デバイド」から「情弱」へ。格差は10年おきに変容してきたわけですが、最近は「保有時間貧者」が時代の象徴になってきたと感じています。SNSによって誰もが情報発信を出来るようになった結果、お金よりも時間の方が重要になってきたわけで「時間がなければ、お金も稼げない」だから「有益かわからない貴方に付き合ってる時間などない」という人が増えているのだと感じています。あなたは「時間泥棒」と呼ばれていませんか?その辺を社会構造から読み解きたいと思います。
1:情報を得ることが難しいのではなくて、何が有益な情報か見分けがつかなくなった。
検索すれば大体のことなら何でも出てきます。自習するには最高の時代です。しかし24時間しかないのでヒトが情報を摂取できる量には限りがあります。速読しても無限に本を読めるわけではありません。そこで大事なのが「情報の見極め力」ということになります。時間を有効活用できている人は「情報の見極め力」も高いので、判断も決断も早い。行動も的確なので時間当たりの生産性が高い。さらに加えると「情報接種して行動までのカイゼンの早回し」が出来ているので、指数関数的に生産性が高まります。時間利用方法の違いが収入の格差につながっていると言っても過言ではありません。乱暴に例えるとムーアの法則の人間版というイメージです。
「情報の見極め力」は自分の価値判断基準の軸がしっかりしているかどうかで変わります。つまり(良い意味での)個人主義 individualが根ついているかで差がつくわけです。自分の判断機軸がしっかり養われているのが大事になっているのは、人事採用担当者が「地頭の良いひとを求める」ことにも表れていて「情報の見極め力」がシゴトへ影響することが大きいことが察せます。
2:「保有時間貧者」は「時間ケチ」が激しくなる
最近zoomでも雑談することが大事だと感じてます。全てがミーティング形式だと余白が無くなってしまいます。企画には偶然から気づく「視点」が大事ですが、それが下がっているのではないかと感じるからです。しかし声掛けしてもサラーっとかわされるときがあります。これは自分に魅力とかバリューが足りないからだと自制していたのですがどうも違うのではないかと感じることが増えました。それは「有益かわからない貴方に付き合ってる時間などない」という空気を感じたからです。一度くらいなら自分の問題だと思っていられるのですが、これが若い世代を中心に急増したのは単なる思い違いとは考えられません。
わたしは10年ほど前に見た映画・タイムを思い出しました。この映画はジャスティン・ティンバーレイクとアマンダ・サイフリッドが出演している近未来SF映画なのですが、遺伝子操作によって25歳から歳を取らない世界を描いています。そのため人口過剰を防ぐために通貨が時間になり、人々は自分の体に埋め込まれた「保有時間・腕時計」をSUICAのようにかざすと、日用品からバス運賃まで様々なことに支払うことができます。さらに貧困層地域と富裕層エリアは物理的にゲートで隔離されていて、人種区別政策が敷かれてます。交わらせない事で区別を見えなくしてるんですね。裕福な時間を十分に持っている人たちは永遠に生きることができるほど時間を持っているので動きもエレガントなのですが、貧困層は工場で働くことでわずかな時間を給料として受け取り、一秒一秒を大事にして生活しています。腕に光る時間表示が0になると命は終わるのですが、自分の腕を上にして相手の腕をつかめば相手の持っている時間を転送できる仕掛けになっています。
主人公はある日、絶望して自殺する直前の富裕者から時間を転送されて一夜で時間持ち(お金持ち)になるのです。その後、富裕街へ行き、時間銀行・総裁の娘と恋に落ちるのですが、ある日「時間」が価値なった象徴するシーンとしてご飯を食べるのが早くて貧乏人だとウエイトレスにバレてしまうシーンが象徴的です。
「有益かわからない貴方と雑談してる時間はない」という思考は一見合理的に見えますが果たして本当にそうなのでしょうか。今はまだわかりません。これから価値観の変化が起こるのかもしれません。時間の使い方が、その人の裕福さや人柄までを示す時代が本格的に来るのかもしれないと感じています。
3:そもそも「SNS世代」と「ガラケー世代」では渋谷スクランブル交差点で見えている景色が違う
自分の見えてる世界が全てだと感じがちですが、果たして本当に見えてる世界は一つなのでしょうか?「たった一人の分析から事業は成長する・実践 顧客起点マーケティング」西口一希・著にも書かれていますが、たとえば渋谷の交差点に50代のビジネスマンと、スマホを使いこなしている10代の若者がいるとします。50代のビジネスマンからすれば、ただそこに若者がいるのが見えるというだけですが、その若者はスマートフォンを通して別の世界とつながっているわけです。同じ場所にいても、見えている世界が全然違います。
これをビジネス視点で見ると「マーケットが2つに分かれている」と捉えることができます。この2つのマーケットは、コミュニケーション方法も異なれば、思考様式も、情報伝達手段も、時間の概念も、距離の概念も全く違います。それなのにデジタル作法を知らずにビジネスをしていけば、新規顧客には永遠に到達できないし、新サービスの存在を知らせることすらできません。
つまり、どんなに従来のリアル世界のビジネスに長けていたとしても、デジタル世界では通用しないわけで、この2つのマーケットが重なり合う部分を生きていくには、どちらのマーケットも理解する必要があります。これまでビジネスについての教育は、リアルである物質世界をベースに成立していましたが、コロナ禍で世界は変わりました。これからはこの2つの世界を両方から理解しなければならなくなっていると思います。私はそこにフォーカスを当てています。青臭いように感じるかもしれませんが、この2つの世界が「何か」を分かち合えることが幸せを増やすのだと信じているからです。SNSに使われるのではなく、SNSを使いこなすことはこの2つのマーケットが重なり合う部分を生きていくための一丁目一番地だと考えるからです。
「保有時間貧者」を脱する方法
時間とは生きてる年数と過ごし方で変わります。苦しいと時間は長く感じるし、夢中になると時間は早く感じます。そして歳をとると時間は早く感じるものです。しかし「時間単価の違う世界に身をおく」というのはそれとは違うのです。
第3回:「優れたコンテンツはバズるに負けるのか?」で図解しましたが、アテンション・エコノミーとは「お金よりも時間の方が有限なので価値があるようになる」そして誰でもが情報発信できると情報大洪水が起きるので「注目を集めた情報」にパワーがシフトするということですが、「時間単価の違う世界」とは、この流れに影響を受けています。
「有限の時間をいかに効率よくするか?」と考えがちですが「有限の時間からどうすれば富を分かち合えるか」を考えることが、「保有時間貧者」を脱する方法 だと思います。時間が経済のサイクルの主要価値になってきているのであれば「時間をおすそ分け」することが、「保有時間貧者」を脱する方法です。困ったときはお互いさまと言って時間をわけあう。もしくは時間をかけてプレゼントをつくる。これは寛容性にほど遠い混雑している山手線のラッシュには考え難いですが、すこし踏みとどまって考えてみることが大事です。「貧すれば鈍する」と言いますが、貧乏をすると毎日時間のことばかり考えるようになるから、人は知恵や頭の回転が衰えてしまい賢い人でも愚かになるという意味です。暮しが貧しくなれば、心までも貧しくなるものだということを言ってます。それから「カネと異性は追いかけると逃げる」とも言います。大事な時間をおすそ分けしてみる。SNSで繋がることができるようになった時代だからこそ、価値観や思考様式をアップデートして行動することが大事になってきていると思います。
・良い文章は 読む人の数だけある
・読まれる文章は シェアされる数だけある
・優れた文章は 記憶に残る数だけある
世間には「〇ヶ月でフォロワー数を〇〇万人に増やしました」というセミナーはあっても「自分の仕事や興味関心のためにSNSをどう使うか」を教えてくれる所はありません。SNSを自分の仕事のためにどう使うか、ゴール戦略からどうつかえばいいかを教えてくれる学校はなかなか見当たりません。というわけでSNSコーチングをはじめましたが、実践スキルにはSNSの使われ方を社会構造やリテラシーから読み解くことも大事だと感じています。SNSをビジネスに活かしたい方へ少しでもお役に立てたら嬉しいです。情報発信学・ニュースレターは、ほぼ毎週月曜日発行を予定してます。ではまた来週お会いしましょう。
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