池松潤です。サブスタックにまだ慣れないですが、今週もよろしくおねがいします。
情報発信学とは、自分の仕事や興味関心のためにSNSを使ってどのように情報発信していくのかを体系的に学ぶことです。
世間には「〇ヶ月でフォロワー数を〇〇万人に増やしました」というセミナーはあっても「自分の仕事や興味関心のためにSNSをどう使うか」を教えてくれる所はありません。ライターのためのライティング教室はあっても、SNSを自分の仕事のためにどう使うか、ゴール戦略からどうつかえばいいかを教えてくれる所はなかなか見当たりません。
というわけでSNSコーチングをはじめましたが、実践スキルにはSNSの使われ方を社会構造やリテラシーから読み解くことも大事だと感じています。SNSをビジネスに活かしたい方へ少しでもお役に立てたら嬉しいです。情報発信学・ニュースレターは、ほぼ毎週月曜日発行を予定してます。
池松潤(いけまつ じゅん)
恋愛小説家/ サイボウズ式第2編集部 / 情報発信学 SNSコーチング ※最新情報・メディア・イベントなど詳しくは ⇒ コチラ
第2回:「検索される恐怖」と「検索した絶望」に生きている
誰もが情報発信できる時代は、表面的には「可処分時間の争奪戦」を戦っているように見えるのですが、「記憶・争奪戦」へシフトしつつあるように感じています。そうなると、ジョブ型雇用時代のキャリアプランには”情報”にどう向き合うのが大事なのか?とモヤモヤしてる人が増えているように感じています。これはこれからSNSをビジネスに活用したい方へ書いておきたいと思います。
1:脳の前に現れる「絶壁」と「絶望」
検索されて身バレを恐れたり、過去の「黒歴史」が見つかってしまう恐怖というのは想像ができますが、検索する絶望という現象をよく見かけるようになりました。
スマホで検索すると「凄いひと」が、そびえる大きな岩のような絶壁に見えてしまう。「私などは何をやってもダメだ」と出鼻を挫かれて、挑戦への意欲を削がれてしまう様子を、SNSネイティブ世代によく見かけます。
以前は、ナイーブなタイプに生じているだけだと思っていたのですが、ワークショップセミナーや企業研修で見かけるようになり、ちょっと様子が違うなと感じるのです。検索しても「みつけてもらえない絶望」が加わると、どうしていいのか分らない不安が増強されて、“検索したら見える絶望“は、ダブルで苦しみの絶壁が目の前に訪れます。
この様子を昭和世代は、「何を言ってるんだ」と感じるかもしれません。コロナ禍で加速したと思われる「検索したら見える絶望」という現象。この底流を観察すると“SNS症候群”※と連動している事がわかります。積極的に情報発信するタイプに起きるのが“SNS症候群”なのだと考えます。これは「いいね」や「「フォロワー数」に敏感になる事で生じる、FOMO※やMOMO※と呼ばれるFacebook疲れやTwitter疲れと呼ばれる「SNS鬱」になってしまう人とは違った世界だと思うのです。
※「SNS症候群」とは
人との距離感を把握できなくなる 、被害妄想や自意識が過剰になる、自己肯定が低くなる、マウンティングなどを無意識のうちに繰り返して自分を見失うことです。近年の現象なので「病気」として認定するどころか、論文も多く無いのが現状です。
※FOMO:(the Fear Of Missing Out)
取り残される不安・恐怖のこと。SNS病として、2011年New York Timesがこの現象を「FOMO」と名付けたことで広まった。
※MOMO:(the Mystery of Missing Out)
他人がSNSに投稿しないことに対して不安を抱く症状。例えば、友人が数日SNSの投稿をやめたら「他のアプリに移行したのか? 」、「知らないのは自分だけか?」「もしかして嫌われてしまったのか?」と被害妄想的にふくらむ事。
2:ナイーブだと断ずる前に「もしも“SNSの砂塵“が眼に入ったら」を想像してみる
ソーシャル・ネイティブとも言えるSNS空間で情報アウトプットを活発に行っている人ほど、SNS空間における“砂塵”や“小石”が飛んでくる事があります。これは炎上とは違う現象です。炎上は匿名性から生じる悪口や“Disり”から生まれる負の連鎖ですが、それ以外の「SNS症候群」と思われる人から直接メッセージが飛んでくるのです。
個人主催を中心として、招聘されるイベントはオンライン化されて、非接触でも多数の方とzoomで何度もお会いするようになりました。リアル社会だけでセミナー講演活動をしていた頃には見かけなかったメッセージが、コロナ禍以降から急激に増えてきました。
SNSもプラットフォームによって使われ方やユーザーの特性が違います。修羅の荒野とでも言い例えられるtwitterもあれば、比較的穏やかで平和なnoteもあります。各プラットフォームによって文化やスタイルが違うのです。
「検索したら見える絶望」現象の裏側の闇とでも云いましょうか。私信として送られてくるメッセージには、それぞれに悩む現実や、息苦しさが伝わってきます。苦情やDisりとも違う直接のメッセージには、弱者として助けを求めるものから、非難を含んだ痛みをぶつけてくる叫びです。
私の場合は、毎月平均をすると、全体の1パーセントくらい。これは命にかかわるような問題ではありませんが、砂が眼に入ったとでもお伝えすれば、その痛さが理解して頂けるかもしれません。
メッセージを送ってくる方は、肩書きもしっかりされていて、ネットで情報アウトプットを積極的にされていて、別に”気のふれた異常者“ではなく、一見、普通の生活者です。誰でも情報発信できて、誰でもが主催できる時代には、その状況に適応したスキルが必要になっていますが、これは情報リテラシーを磨けばクリアできる問題でしょうか。SNSで情報アウトプットをすればするほど生まれる「心の問題」に関わる深い社会課題だと感じています。
3:もはや“情報リテラシーの問題”ではない。「認知汚染」が拡大している。
「フェイクニュースに踊らされないためには、情報リテラシーを磨きましょう」とは、ニュース番組で良く聞かれる言葉です。しかし“「検索したら見える絶望」現象“は、情報リテラシーを磨けば解決するのでしょうか?
「検索したら見える絶望」現象とは、乱暴に例えると「トイレの落書きにまで注視してしまう認知汚染」から引き起こされています。余計な点にまで力(想像力や類推力)を使ってしまう問題なのです。これには人間が文章の行間から察知する「想像力」を補正・抑制する「想像力へのスタビライザー(補正装置)」が必要になっているとでも言いましょうか。「検索したら見える絶望」現象への新しいメンタル・モデルが必要になっていると考えています。
※メンタルモデル(mental model)とは「認知心理学」:頭の中にある「ああなったらこうなる」といった「行動のイメージ」を表現したもので、認識と意思決定において重要な役割を果たします。脳はメンタルモデルが構築されると、時間とエネルギーを節約する手段として「慎重に考慮したり」「分析」へ脳の使い方を置き換えます。たとえば、例をあげると「この情報は自分にとって不利益であり敵対メッセージだ」というメンタルモデルがあるとすると、このメンタルモデルを保持する人は、ある情報に遭遇したとき反射的に過剰防衛します。これは自己のメンタルモデルを適用した結果です。SNS情報に対する多様なメンタルモデルが形成されてる人や、そもそも違うメンタルモデルを保持している人はこのような反応はしません。
あるヒトは「SNSは超個人戦の最終武器」と考えて、別のヒトは「SNSはコミュニケーションであり喜ばせるモノ」と考えるとします。前者と後者には打ち手に大きな違いが出てくる。無意識の前提を成すメンタルモデルを敢えて言語化させるか、メンタルモデルを意識的に保留させることで、建設的、共創的な対話の場を作るといった認知補正が必要となっているのです。
4:SNSの奴隷にならない方法
SNSプラットフォームは「より多く」「より長く」「より頻繁に」使ってもらう設計になっています。そしてSNSを見ていれば、様々な釣り文句が溢れています。いかにもそれだけをやれば“何者になれるか”のような文章が、私たちの脳をハックしようとしてきます。
・1週間でフォロワー1万人にする5つのポイント
・何者でもないワタシがフォロワー数を増やして良かったこと
・何でもない私が1か月で○○万稼いだ3つの方法
SNSはツールですが、「検索する絶望」現象と、その底流のSNS症候群は、脳に一番近いスマホから生じていますが、それは「使いこなしているのか?」「使われているのか?」分らない状態から引き起きています。
フォロワー数や、いいね数という「目に見えるもの」が気になって多くの人が反応してしまうのは、現実として受け止めざるを得ませんが、心の問題である「検索したら見える絶望」現象や「SNS症候群」は止めようがないのでしょうか。
新しいメンタル・モデルを産み出して行く事が求められていると思います。これは、心療内科と認定心理士の中間の谷間のような位置にあります。リモートワークがあたりまえになった今日この頃、ますます情報アウトプットは大事になりました。そこにヒトは存在しているでしょうか。
情報とは、情けに報いると書きます。
情報アウトプットの先に、本当のヒトは見えているか。無意識のうちに、SNSのアルゴリズムに最適化した道を選んでいませんか?これは、入れ子構造のようなもので、だからこそ元気なメッセージを情報発信していく事が大事ですし、「検索したら見える絶望」現象や「SNS症候群」に向きあえるのだと思います。
情報発信学・ニュースレターは、ほぼ毎週月曜日発行を予定してます。ではまた来週お会いしましょう。
こちらでも情報発信しています。
https://note.com/sns_coaching
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池松潤(いけまつ じゅん)
恋愛小説家/ サイボウズ式第2編集部 / アウトプットLAB 情報発信学 SNSコーチング ※最新情報・メディア・イベントなど詳しくは ⇒ コチラ